外食


勤め先から愛車で帰路についている途中にポツポツと雨が降り出して、気付けばゲリラ豪雨のような激しい雨になっていた。ポケットの中で携帯のマナーが鳴り、交通違反だと分かっていながらもそれを取り出して受信されたメールを開く。『迎えにきてくれないか』それだけの文章だった。差出人は見ていないがこんなメールを送ってくるヤツは一人しかいない。俺は進路を変更しアイツの会社まで車を走らせた。




いつ見ても嫌味な位デカい会社だ。出入り口付近に限りなく寄せて停めるとすぐに人影がこちらに走ってきて、素早くドアを開けて助手席に乗り込んできた。その間おそらく5秒もなかったが、仙蔵のグレーのスーツは雨に打たれ黒く染まり髪からも水滴が垂れていた。 

「随分早かったな、助かったぞ」
「急いで来たからな。その代わり家帰ってねぇから着替えとかタオルはねぇぞ」
「ハンカチくらいは携帯してるさ」

鞄を開けてハンカチを取り出し水滴を拭う。全く、コイツは何をしても様になる男だ。悔しいが、俺が女でコイツが自分の上司だったら確実に惚れる。

「天気予報では雨は降らないと言っていたからこのスーツにしたんだが、最悪だ。傘もないし」

ぶつくさと文句を言いながら狭い助手席で器用にジャケットを脱ぎネクタイを緩める仙蔵。風邪を引かれそうで風量を弱めにしてゆっくりと車を発進させる。都会の大通りのネオンは雨でぼやけて幻想的に見えて、俺は気付けば口を開いていた。

「たまには外食すっか。少しお高めのフレンチでも食おうぜ。お互いスーツだし」

俺も仙蔵も料理は割と好きだからあまり外食する機会はない。でもまぁたまには、な。この間給料日だったし大丈夫だろ。

「…なんだ、珍しいな。だがその案いいな、行こう」

シートベルトをした仙蔵が運転席まで乗り出してくる。これは、嬉しい時の反応だ。分かりやすくて思わず笑ったら怪訝な顔をされた。

「でもお前は運転手だから酒飲めないぞ。残念だな」
「バカタレ、そーゆう時は少しは遠慮してお前も飲むな」

叩きつける雨音は煩わしいが、外食するキッカケになったことは間違いない。食事をして、雨が上がっていたら少しドライブをして、酒の力を借りずに愛の言葉でも囁いてやろう。よし。



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文仙でした!
この2人はお互いバリバリ働きつつも、ちゃんとお家で2人揃ってご飯食べてそう。
最近雨すごいですよね、日本どうした…
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